Day Tripper


【レコーディング・セッション履歴】 【収録レコードリスト】
【レコーディング・セッション分析】
【リマスター・モノ】 【リマスター・ステレオ】
【Undocumented Recording Session(1999年原稿)】

【レコーディング・セッション履歴】
65/10/16ジョージ・マーティンノーマン・スミス
ケン・スコット
Recording 第1〜3テイク、リハーサルとリズムトラックの録音、第3テイクのみが完全バージョン
65/10/16ジョージ・マーティンノーマン・スミス
ケン・スコット
Recording 第3テイクへのSI、ジョンとポールのボーカル(各々ダブルトラック)を追加
65/10/25ジョージ・マーティンノーマン・スミス
ケン・スコット
Mono Mixing 第3テイクよりリミックス1
65/10/26ジョージ・マーティンノーマン・スミス
ロン・ペンダー
Stereo Mixing 第3テイクより
65/10/29ジョージ・マーティンノーマン・スミス
ケン・スコット
Mono Mixing 第3テイクよりリミックス2と3、レコード用とTV用
66/11/10不在ピーター・ボーン
グラハム・カークビー
Stereo Mixing 第3テイクよりリミックス2
"A COLLECTION OF BEATLES OLDIES"用
レノン('80 PBインタビュー):はっきり、ぼくの曲。ソロ、ギターのプレイク、ほかのすべての部分もね。これはまったくのロックンロールだね。デイ・トリッパーというのは、昼間トリップする奴のこと。ほら、週末だけのヒッピーみたいなものさ、わかるかい?

【Tips】
ヴァースは2小節のリフで E7-E7-A7-E7 となっている。ところが武道館ライブを見るとジョンの左手が押さえてるコードが違う(特にA7)ことがわかる。リリース版ではリズムギターの音が小さくて判別しにくいが、Take1からTake2の合間のチューニング部分を聞けば、E7は という押さえ方であることがわかる。3弦9フレットの小指を押さえたり離したりすることで独特のフレーズを作りだしている。この際、人差し指で3〜5弦の7フレットを押さえつつ、2弦の開放弦を鳴らすのがポイントである。実際、武道館ライブでも窮屈そうなフォームをしているのが確認できる。
一方のA7は、F#m7のようなフォーム で、こちらは人差し指を押さえたり離したりする。
プロモビデオでは普通のコードフォームのようだが、あれはマイム演奏だから、武道館の方が正しいのだろう!

ついでに、リフは
間奏のギターリフは
ベースは で、1弦11フレットはスライドして弾く。

【収録レコードリスト】
90' US PROMO “PAST MASTERS VOL.5” A11 (CDR:EMRCD-003) No dropout in the middle part
CD用ステレオ・リミックス “THE BEATLES 1” A12 (CD:TOCP-65600)
第1テイク? “ULTRA RARE TRAX Vol.2” A05 (CD:TSP-CD-002) 中断
第3テイク? “ULTRA RARE TRAX Vol.2” A06 (CD:TSP-CD-002) カウント付
第1テイク “THE ULTIMATE COLLECTION VOL.3 Disc3” A13 (CD:YDB-303)
第2〜3テイク “THE ULTIMATE COLLECTION VOL.3 Disc3” A14 (CD:YDB-303)
“THE RECORDING SESSIONS VOL.1” A05 (CD:02-CD-3305) ベーシックトラック
第2〜3テイク “THE RECORDING SESSIONS VOL.3” A20 (CD:02-CD-3307)
第1〜3テイク “DOCUMENTS VOL.2” A11 (CD:DR 028 CD)
第1〜3テイク “UNSURPASSED MASTERS VOL.2(1964-1965)” A10 (CD:YD-002)
65/10/26版リミックス・ステレオ1 “YESTERDAY...AND TODAY” B5 (ステレオLP:ST-2553)
65/10/26版ステレオ・リミックス1 “The Beatles/1962-1966” C04 (2LP:EAP-9032B)
リミックス・モノ2 “We Can Work It Out” A02 (CDシングル:TODP-2131)
リミックス・モノ2 “A COLLECTION OF BEATLES OLDIES” B03 (モノLP:PMC 7016)
リミックス・モノ2 “MONO MASTERS” B01 (2CD(リマスター・モノ):5099969946325-424)
66/06/25 “MYTHOLOGY, VOL 2” D05 (4CD:STR-011〜014) エッセン
66/06/30 “THE LIVE BEATLES” A04 (CD:DR 002 CD) 東京
66/6/30 “ULTRA RARE TRAX Vol.8” A06 (CD:TGP-CD-112) 東京
66/07/01 “THE LIVE BEATLES” A15 (CD:DR 002 CD) 東京
66/07/01 “THE ULTIMATE COLLECTION VOL.2 Disc1” A21 (CD:YDB-201) 東京
リミックス・ステレオ2 “A COLLECTION OF BEATLES OLDIES” B03 (ステレオLP:EAS-80557)
リミックス・ステレオ2 “PAST MASTERS VOL.2” A01 (CD:CP32-5602) CD用編集
リミックス・ステレオ2 “The Beatles/1962-1966” B04 (2CD:TOCP-8010,11) CD用編集
リミックス・ステレオ2 “PAST MASTERS” B01 (2CD(リマスター・ステレオ):50999 2 43807 2 0) 一部修正

【レコーディング・セッション分析】
 ジョージの弾くギターは典型的なセミアコの音(※1)だが、 CASINOを所有する以前であることからES-345の音と思われる。
 ジョンはStratocasterのような音であるが、面白いのはEのコードフォームである。 1・2・6弦は開放弦、3〜5弦は7〜9フレットで3度の音を使わないパワーコードになっている。 更に3弦は時折7thの音を出すのだが、2弦を開放にしているので非常に押さえ難い。 この演奏は武道館ライブやレコーディング時(のテイク間)のチューニング箇所で確認できる。

※1:図は最初のE音(6弦の開放弦)を周波数解析したものである。 鳴り始めは基音(図ではE1)が大きいが、減衰した箇所では倍音の方が大きくなっている。 これはアコースティックなボディに共通する現象で、 ソリッドボディよりも共鳴する音域が狭い事を示している。

最初に作成されたリミックス・ステレオ1は処分されているらしいが、US版ステレオLP『イエスタデー・アンド・トゥデイ』以外にもLP『ザ・ビートルズ 1962-1966』やシングル盤に収録されており、 日本ではこちらのリミックス・ステレオの方が一般的であった。
これに先だって作成された65/10/25版リミックス・モノ1も同じ内容だったと思われる。 CD『パスト・マスターズ VOL.2』は65/11/10版リミックス・ステレオ2を基にしており、イントロに関しては65/10/29版リミックス・モノ2と同様に、トラック2トラック4Eギターが入っている。

1'55"のベースの消える箇所はどのフォーマットも違いが無いので、単に弾いてないのだろう。
 『1』では演奏ミスの修正も行われている。今までの編集作業は該当区間の全ての音が差し替わっていた(アナログテープであるため)。ここでは『ラバー・ソウル』期に特有の中央に音が無い事を利用して、片方のチャンネルだけを差し替えている。図2は1'50"付近のギターリフの波形画像で、上が『パスト・マスターズ』下が『1』、各々の青が左チャンネル、赤が右チャンネルである。4拍目表〜1拍目裏の音が右チャンネルだけ異なっている(黒線の範囲)。このコピー元となったのは、1分46秒の間奏最後のリフ(図3)に示した箇所である。同様に2'31"(3拍目裏の"(day trip)per 〜 yeah")を2'40"の"yeah"の無い部分と差し替えている。


要確認
◆ トラック4に録音された間奏のギターソロは差し替えられたらしく、"try to please her"と歌った直後に録音停止させたような切れ目がある。 CD『ビートルズ 1』の‘Day Tripper で修正したバージョンがリリースされているが、ANTHOLOGYビデオのバージョン各トラックの定位が違うでも修正が反映されていることから、 4トラックテープの状態で修正してリミックスした可能性が高い。CD『ビートルズ 1』とANTHOLOGYの比較をする必要がある!

 CD『パスト・マスターズ VOL.2』は2'10"の“It took me 〜”の直前で編集しているが、目的は不明である。

【リマスター・モノ】
相違箇所内容
1'10"4拍目のノイズを削除。
1'44"3拍目裏のノイズを削除。
エンディングF.O.が少し長い。

【リマスター・ステレオ】
相違箇所内容
0'05"3拍目裏のノイズを削除。
0'53"2拍目のノイズを削除。
1'50"4拍目〜1拍目裏にギターとタンバリンを追加(右チャンネルの差し替え)。
2'32"4拍目裏〜2拍目表にギターとタンバリンを追加(右チャンネルの差し替え)。

【分析】
 リマスター版ステレオ・バージョンは『1』と編集箇所が同じであるが、新たに編集し直している。
なお、後半の編集箇所はRS1(USステレオ)からコピーしている。

【Undocumented Recording Session(1999年原稿)】
“1”の‘Day Tripper’に関して、まず、既バージョンとの違いは、
1'49":右チャンネル(ギターリフの4拍目表〜1拍目裏)
2'31"〜2'32":右チャンネル(3拍目裏の“(day trip)per 〜 yeah”
となっています。面白いのは右チャンネルの音だけゴッソリと差し替えている点です。 リミックスしたところで同じ結果にしかならないので当然といえば当然です。 また、左チャンネルの音は全く一緒なので、テープ編集のような繋ぎ目がありません。 折角だから、どこをコピーして差し替えたのかも明らかにしましょう。
前者は1'47"の間奏最後のリフの部分をコピー
後者は2'40"の"yeah"の無い部分をコピー
 これらは、誰でも確認可能です。CD-R等でWAVE形式のデータにした後、 波形編集ソフトで(サウンドカードに付いてるおまけソフトで十分)、 右チャンネルだけを表示し、該当個所を比べてみてください。 全く同じ形をしています。何の小細工もなく、カット&ペーストしたようです。

リリース・バージョン(第3テイクより)

65/10/26版リミックス・ステレオ1“YESTERDAY...AND TODAY”(ステレオLP:ST-2553)
“WE CAN WORK IT OUT”(ステレオ・シングル:EAR-20231)
“1962-1966”(ステレオLP:EAP-9032B)
65/10/29版リミックス・モノ2“WE CAN WORK IT OUT”(CDシングル:TODP-2131)
65/10/29版リミックス・モノ3グラナダTVの特番用(ANTHOLOGY VIDEO)
65/11/10版リミックス・ステレオ2“A COLLECTION OF BEATLES OLDIES!”(ステレオLP:EAS-80557)
CD用ステレオ・ミックス“PAST MASTERS VOL.2”(CD:CP32-5602)
“1962-1966”(CD:TOCP-8010〜11)

マスターテープ構成

第3テイク ステレオ・リミックス1&2
CD用リミックス

ANTHOLOGY DVD用リミックス

TAKE 3 アウトテイク
Track1 ドラムス
ベース
Track2 ジョンのリズムギター
ジョージのリードギター
Track3 ジョンとポールのボーカル
ジョージのコーラス
Track4 ジョンとポールの2ndボーカル
タンバリン
2ndリードギター(間奏を含む)

比較結果

 Track4に録音された間奏のギターソロは差し替えられたらしく、"try to please her"と歌った直後に録音停止させたような切れ目がある。 “1”の‘Day Tripper で修正したバージョンがリリースされているが、ANTHOLOGYビデオのバージョン(各トラックの定位が違う)でも修正が反映されていることから、 4トラック・テープの状態で修正してリミックスした可能性が高い。

***** “1”とANTHOLOGYの比較をする必要がある! *****

 ステレオ・バージョンはTrack1と2が左チャンネル、Track3と4が右チャンネルに振り分けてある。最初 に作成されたステレオ・ミックス(リミックス・ステレオ1)は処分されているらしいが、一般的にステレオ・バー ジョンとしてリリースされたのはこのリミックスである。最大の違いはイントロのギターがTrack2のギターだ けになっている点である。これに先だって作成された65/10/25版リミックス・モノ1も同じ内容だったと思われ る。CDバージョンは65/11/10版リミックス・ステレオ2を基にしており、イントロに関しては65/10/29版リミッ クス・モノ2と同様に、Track2とTrack4のギターが入っている。リミックス・ステレオ1とリミックス・ス テレオ2に関するその他の違いとしては、リミックス・ステレオ2の方がボーカルのエコーが深くなっている。こ れは、リミックス・モノ2の流れを汲んだものと思われるが、それよりも更に深いエコーになっている。また、下 表にもあるが、1'52”のタンバリンはどちらのバージョンにも入っているが、リミックス・ステレオ2の方がF.I. が早いので叩き始めの音が聞こえる。更に2'32”の“yeah”は、本来歌わないはずの個所で間違って歌ってい るものである。これがリミックス・ステレオ1とリミックス・モノ2ではそのまま入っているのに対して、リミッ クス・ステレオ2ではF.O.させているので続くタンバリンがF.I.しながらミックスされている。また、リミッ クス・ステレオ1のエンディングはリミックス・モノ2と同じ位の長さである。

 なお、CDバージョンは2'10”の“It took me 〜”の直前で編集しているが、目的は不明である。

 1'50”と1'55”でギターの音が消えるのはよく知られている。最初のものは、Track4に入っているギター を消しているのであるが、リミックス・モノ2は2拍目の裏からF.I.するのに対し、リミックス・ステレオ2は 表からF.I.するのでタンバリンが余分に聞こえる。つまり、このギターはタンバリンと同じトラックに入ってい ることがわかる。それでも敢えてギターを消しているということは演奏ミス等があるのだろう。リミックス・ス テレオ2では、タンバリンだけでも極力生かそうと努力したようである。1'55”のベースはTrack1に入ってお り、消える箇所はどのフォーマットも違いが無い。一緒に入っているはずのドラムス(バスドラ)は聞こえてい るので、単にレコーディング段階でこの音を弾かなかったというだけだと思われる。いずれのケースも、本来な ら録り直すか、編集パートを作成してもおかしくないケースである。いくら“RUBBER SOUL”が「ミスでも残す」という傾向があったにせよ、少なくとも前者はミキシング段階で削除するような内容である。このことから、修 正をする余裕も無く完成を急いでいた状況が窺われる。
MONO(TODP-2131) STEREO(CP32-5602)*








2'32”:“yeah”が大きめ
3秒程度(リフ1回分)長い
0'00”:イントロ
0'18”:Aメロ1
0'53”:Aメロ2
1'21”:間奏
1'49”:Aメロ3


2'31”:エンディング

0'18”〜:ボーカルに深いエコー



1'52”:タンバリンが1回多い
2'10”:テープ編集

2'32”:“yeah”でF.O.